はじめに
「住みたい街」というテーマでブログを書いてほしい、と依頼をいただきました。
まず、これまで住んできた街を振り返ってみます。わたしは大分県の別府市で生まれ、大学進学を機に東京で生活をはじめました。京都に少し住んだこともありますが、最終的に東京で就職。何度か引っ越しを重ね、東京近郊で暮らした総年数が大分で暮らした年数に迫りつつある頃、中国への出向に応募し、上海駐在となって2年強が経ちます。
とはいえ出向なので、数年で東京に戻る予定。出向前に買ったマンションにも愛着があるので賃貸にも出さず、現在は一時帰国のときの飲み会などで活用している、という状況です。

すごい勢いで都市化が進む上海は面白く、移動や買い物が順調にスマートにできるようになったり、お気に入りのレストランや雑貨屋を見つけたり、知らない場所になじんでいくプロセス自体は楽しめるようになった気がします。ただ「住みたい街」とはちょっと違います(たとえば中国なら、路上にローカルな賑わいのある四川省成都市や、少数民族の文化や珍しい生きものを目にできそうな雲南省のほうが好み)。
海外・国内問わず旅行が好きなのですが、最近までどんなにきれいなところに行っても「ここに住みたい!」となったこともありませんでした。わたしが地方出身なことと無関係ではないのですが、地縁やしがらみをできるだけ避けたい気持ちもあります。
今後も当分は東京を精神的な基点とする中、わたしがほかの街に住みたいという気持ちを持つには、たぶんいい街なだけでなく、大好きな「生きもの」を軸にしたプラスアルファの「必然性」が必要なのです。そこで、ここでは最近「必然性」を感じ、気になっている街をふたつ挙げます。
住みたい街その①:三崎口 ―― 友人と趣味を活かすための基地「磯の家」が欲しい
わたしの趣味は生きもの好きの友人と、フィールドに虫や生きものや化石・鉱物などを探しに行くことです。

最近は特に、磯でのシュノーケリングのほか、タイドプール(※干潮時の磯にできる天然の生け簀的なやつ)での生きもの観察にはまっています。数人でヤドカリや魚を観察し、口々にほめそやしつつ写真を撮って海に戻すだけですが、これが異常なまでに楽しく、すさまじいリフレッシュ効果がある。いや、磯友たちが「磯……磯に行きたい……」「昨日行ったのに磯成分が不足してきた」「磯が来い」とギィギィ鳴いているのを見るに、あれは中毒とか依存かもしれない。
しかし、良いフィールドは車が必要な場所が多く、着替えやタオル、撮影道具などの荷物も多い。車を扱える友人に負荷が集中するのも悩みです。十年来のペーパードライバーであるわたしが運転できればいいのですが、複数の命が危険に晒される……。
そこで「都心から公共交通機関でアクセスしやすく、かつ良い磯」という条件で探してみたところ発見したのが、神奈川県・三浦半島の三崎エリアです(こういう場所もありますよ、というのがあればこっそり教えてください)。


観察のみとなりますが、70ヘクタールもの広大な自然公園である「小網代の森」の干潟で遊ぶのも楽しいですね(※2019年11月1日現在、台風の影響で一部立ち入りが制限されています。詳しくは公式サイトをご覧ください)。
そこで、これらのフィールドへの玄関口となる三崎口あたりに、生きもの好きの基地として「磯の家」を作れないか、と最近考えています。ネーミングは、「海の家」のキラキラ感に若干対抗している。引っ越しても通勤はなんとかなりそうだけど、できれば週末に帰る家として、磯友達とシェアしつつ利用できれば最高です。
東京にしか拠点がないと、休日海に入ってから都内に戻り、この海上がりのパサついた顔と大荷物で飲み屋を探すのはちょっときついな……となりますが、「磯の家」があればシャワーを浴びて洗濯しながら飲んだくれることもできる。かさばる海道具をまとめて置いておき、磯仲間と共同利用できれば便利だし……。
何より「いつでも磯に行ける」と思うことで、心の安定がもたらされるに違いない。職場で多少の理不尽に遭っても「でも、わたしは退社後に磯の家でビールを飲んで、週末はウミウシと戯れたりタカラガイを拾ったりできる……この人にはマイ磯がないから、わたしに当たるのもしかたがない……」と、謎の磯から目線を発揮できるようになるわけです。
磯中毒者のQOLにとっては「職住近接」ならぬ「磯住近接」もまた重要。ウェットスーツで潜ってのウミウシ観察や浜辺に打ち上げられた漂流物を観察・収集するビーチコーミングは冬が本番とも聞きますし、季節を問わず海を楽しむ方法も学んでいきたい。