今春はGWが見納め!山じゅうが春色に染まる桃源郷「 花見山」
「なに?花見はもう済ませた?寝言は大概にしてくれ。朝から出張って敷いた見苦しいブルーシートにダウンジャケットを着てちぢこまり、冷えたカラアゲとプラカップの発泡酒。弾まない会話から逃れようと目線を上げれば、季節進行の遅れによる驚異のゼロ分咲きのソメイヨシノ…そんな花見はまがい物だよ。明日花見山へいらっしゃい。本当の花見をお目にかけますよ」
脳内で美味しんぼの山岡さんが絶えず囁きかけてくるので、福島の花見山に行ってきました。毎年この時期になると、関東のJR駅でこの桃源郷のポスターを見かけます。「一度は行ってみたいけど…花見”山”ってくらいだから、どっかの山奥にあるんでしょ?」と思うじゃありませんか。
「ところがどっこい、新幹線で東京駅から一時間半+バスで20分のつごう2時間から来れちゃうんです!日帰りもラクラクいける!」
福島駅前からは路線バスのほか、花の時期には臨時バスが運行しています。車内は花をめでるのが大好きなおばちゃんまたはおばあちゃん達でいっぱい。そう、おばちゃんは暴力団幹部の玄関先の花さえ盗んでしまう*1こともあるくらいお花が大好きな生物…。
おばちゃん1「アラー、ちょっと見えたわよ、きれいネー来てよかったわネー」
おばちゃん2「おまんじゅう売ってるかしらね〜」
メレ子(間違いなく売っていると思うが、そんなにおまんじゅうが食べたいものだろうか?わたしもおまんじゅうは嫌いなほうではないが、年をとったらよりおまんじゅうが大好きになるかしら…)
たいへん立派な駐車場につきました。
まず我々を出迎えるのは、おびただしい花をつけたレンギョウ。
山のほうに向かってずっと花色が広がっている!
ちょっと待って!落ち着いて!足元のオオイヌノフグリも見逃せませんよ?
ああっ、ツクシもこんなにいっぱい!
どうしよう…もうどこから見たらいいのかわからない…混乱してきたワ…
ちょっと心を落ち着かせるために、お祭りになる前の花見山の画像を見てみましょう。三月のメレ山さーん?(朝のテレビ中継風に)
ハーイ、三月のメレ山です。実は3月下旬にも福島を旅行しており、そのときにダメ元で花見山にも訪れていたのです。しかしこれはどういう天気だよ…
リンゴ畑もさびしい佇まいです。
つぼみから花色はのぞいているものの、いまだギッチリ閉ざされております。
四月になって花開いた姿がこれ。山茱萸(サンシュユ)という線香花火のようなかわいらしい花です。
しかし、ここは本当に県庁所在地であろうか…ひとりホトホトと歩いていくと
「ヤッ!曲者ぞ」
猫「この先には何もないぞよ!」
メレ子「そうみたいね…」
ナンテンの畑がいろんなところに見られます。
ひっそりと停まっている除染車。
実は現在も、花見山そのものには立ち入りできなくなっています。
市街地をのぞむゆるやかな丘陵地ではもともと養蚕が広く営まれていましたが、戦後本格的に花卉栽培が行われるようになったそうです。花見山の所有者である阿部さんという人は、花を見に集まる観光客のために山を公園として開放し、東屋やトイレを建設して観光地としての基盤を整えました。
震災後、花見山のある渡利地区で一時的に高い線量が検出されたことや観光客の激減、もともと観光客の長年の立ち入りによって花木の根の傷みが危ぶまれていたことなどを受けて、花木の養生のため、公園への入園は制限されることになったそうです。
ではもうお花見はできないのかというとそんなことはなく、大規模に遊歩道が敷設されているので、公園周囲の丘陵歩きで充分に桃源郷を楽しめるわけです。
「楽しんで行きヤー」
メレ子「えっ…あっ、ハイ…」
花卉農家の軒先においてあったのだが、メガネとかアゴに挟まれたサルノコシカケ(キノコ)とか、意味がわからなすぎて怖い…
三月に訪れたときに満開であったのと言えば、この蝋梅(ロウバイ)のみ。
蝋で作ったかのような透明感のある花びらと、とても気品のある高い香りで有名です。
「寒いニャー」「そうだニャー」
植物と動物の境界に果敢に挑んでいるネコヤナギ。
カマキリの卵も春を待っております。
そしてついに来た春!幼いといえどしっかりカマキリの形をした子供たちも、数珠つなぎになって山のあちこちに巣立っていったことでしょう。何匹生き残っているかなー?
白梅(ハクバイ)
白木蓮(ハクモクレン)
幣辛夷(シデコブシ)
木瓜(ボケ)
彼岸桜(ヒガンザクラ)
日向水木(ヒュウガミズキ)
東海桜(トウカイザクラ)
葱(ネギ)!
ネギはともかくとして、すべての木がものすごく花つきがよい。なんだか町や公園で見るものとは別物のようです。販売用の剪定を行うため、このような枝ぶりになるらしい。収穫は花期の前に行うのでしょうが、観光用に枝を残しているんでしょうか。葉の割合が多い自然な樹形も好きなのですが、この密度はなかなか味わえるものではありませんね。自然が豊かというのとはまた違って、すみずみまで心を配って管理された工場などの美しさに近い印象を受けました。
山のあちこちにボランティアさんや警備員がいて、ともすれば畑や私有地に入ろうとする観光客を誘導しています。しかし中には残念な人も…
出店もあちこちに出ていて、おばちゃんが待望していたおまんじゅうも売られている。花見山に生えすぎた花に体を乗っ取られつつあるおじさんが接客している。ああなってしまう前に早く山を下りねばならない。
「虫や生きものを見つけることも期待して来たのだけど、人が多いせいか畑だからあまり生きものがいても困るのか、はたまたまだ寒いからか、あまり生きものいないねえ…」と言いながら歩いていると、大きなニホントカゲ*2がちぢこまっているのを発見。
メレ子「あれ?なんか獲れてしもうた…」
ニホントカゲ「イヤーッ」「ミギャーッ」
メレ子「ん〜、喉のとこが赤くてめっちゃ恐竜っぽい!いっしょに春を祝おうではないか!」
ニホントカゲ「はーなーしーてー」「はーーなーーしーーてーー」
寒いせいか動きが鈍くて、こちらが勝手に盛り上げる余地すらない…こんなに春ランマンとした景色でもここは南東北、気温はまだ低いのでお出かけの際は重ね着の用意をしていったほうがいいです。
切り枝が売られている場所も。このときは脳内で花がゲシュタルト崩壊していたため「フーン、300円ね〜」と思って通りすぎてしまったのですが、花屋で買ったらきっと高いね!あと、純粋な善意で装飾されたであろう値段表示が読みづらくなってしまっている。
遊歩道は30分・45分・60分コースですが、最長のコースはけっこう起伏があります。
いちばん高い場所からは福島市内を一望できる。
ワーイ!めっちゃ楽し〜い
見晴らしのいいカフェでは、年に一度の掻きいれ時にわやくちゃになっていた。すりガラスの向こうに興奮した犯人が…
60分コースというのがまったくアテにならない、三時間弱の春のお散歩でした。しかし、この看板だけはいただけない!ソフトクリームを売るのと説教はそれぞれ別にやってくれよ!
津波の生態系への影響を調査した本の紹介です
いつもわたしが虫ネタを強請るなどしてたいへんお世話になっている自然写真家の永幡さんが、この一年の調査結果を新書にまとめて出版されました。
津波は言うまでもなく人間の生活を激変させてしまったわけで、復旧のための土木工事は環境アセスメントを免除されるなど、ほかの生物のことはとりあえず後回しにせざるを得ない状況です。永幡さんはせめて刻々と変わる環境を記録するため、ずっと沿岸地帯を中心に調査を行ってきました。震災以前から水田等の土地利用が進んでトンボなどの住む湿地が分断されていたことが地域的絶滅をさらに深刻にしていること、生態の違いで似たような昆虫でも生息数に明暗が分かれていること、塩害が遅れて与えた生き物への影響など、実際に歩き回った人でないと書けないエピソードが、誠実な文章とカラー写真でつづられています。こんなに生き物が好きな方が目茶苦茶になった土地を歩き回ることが、どれだけ辛いことだったかというのもひしひしと伝わってくる…。
生き物のライフサイクルを知悉しているからこそ書ける文章でもあります。たとえば被災地に残った泥田でカエルが産卵しているのを見たら、わたしなら躍りあがって浮かれた描写をしてしまうことでしょう。しかしその後も足を運び、産まれた卵の多くは塩害で死んでしまうことを知っていれば、決して明るい光景とは言えません。自分が気持ちよくなれる結論に安易に飛びついた結果、筋違いな活動(クマに与えるためにドングリを山にバラまくとか、泥団子をドブにまくとか、枚挙に暇がなさすぎる)をしている人たちの多さに照らして、この本は生き物に対する誠実さを教えてくれる面もあるのではないかと思います。わたしは生き物とその場限りのお付き合いが多いので、反省しきり…今後はもっと生き物についてじっくり学んで、トンチンカンなことを言わないように気をつけるんだ!というわけで、ぜひ書店で手にとってみてくださいませ。