凍った湖の上に現れる”幻の橋”タウシュベツ橋梁を訪ねる
みなさんこんにちは。「鎌倉時代の仏像でもボンクラ仏師が作ったものは『躍動感に欠けるので平安時代のものである』と認定されてしまうのではないか?」と考え出すと夜も眠れないメレ子です。今回は北海道のダム湖から、冬から春にかけてのみ顔を出す幻の橋「タウシュベツ橋梁」や、糠平温泉郷での雪見風呂めぐりなどのお話です。
糠平温泉郷の小さな宿と雪見風呂めぐり
北海道に旅行したのはちょうど去年の今ごろのこと。帯広駅からバスで一時間半、糠平の町にたどりついた時にはすっかり暗くなっていました。ここにタウシュベツへのツアーを提供してくれるユースホステルがあるのです。
東大雪ぬかびらユースホステル
タウシュベツ橋梁については在華坊さんの北海道旅行記ではじめて知り、絶対行かなくては!と心に決めていたのです(リンク先は初夏の旅行記。廃線サイクリングもうらやましい)。
前評判のとおり、設備も新しくてきれいだし、すごく親切かつ押しつけがましくないもてなしのユースホステルでした。夕食には糠平湖で釣ったわかさぎのマリネも。ここ、厳寒期には氷上わかさぎ釣りのツアーなども催行しているんですよね。犬ぞりの夢はこの北海道旅行で叶えたばかりですが、わかさぎ釣りもわたしの夢のひとつです。
「いま湯めぐり手形というものをやってるのでいかがですか?*1」と薦められ、コンデジとタオル片手に糠平温泉郷に繰り出しました。
糠平温泉郷は10軒程度の温泉宿と、スキー客用の飲食店・みやげもの屋、資料館的な施設とあとちょっとの人家からなる小さい町です。このすぐにひとめぐりできちゃう感じが湯めぐりに最適!
ワーイ
ワーイワーイ
それにしても誰もいなくて最高!最高だけどちょっと心配!
ユースに戻って共同スペースのロフトに置いてある漫画などを読んで夜ふかししました*2。平日で宿泊客が自分だけということを差し引いても過ごしやすすぎる。一人部屋もあるし、ユースというより相部屋もあるペンションみたいな雰囲気です。一人旅のときはふだんあまり宿の時間って楽しまないので、よけいに記憶に残っています。また泊まりたいわ〜
スノーシューで白樺の森歩き
翌朝、すっきり目覚めてかねてより予約のめがね橋スノーシューツアーへ。国道沿いの林道入り口まで車で連れていってもらったあと、スノーシューをつけて歩き出します。スキーウェアも貸してもらいました。
林の中につづく一本道。この雪の下に廃線の線路があるらしい。1930年代に旧国鉄・士幌線として敷設されたものです。
これは白樺かダケカンバか…北の樹は上にすっきり伸びて樹皮が美しいものが多い。
このペロンペロンの樹皮はガンピと呼ばれ、よい焚きつけになるそうです。「しおりにするっていって持って帰るお客さんも多いですよ」と引率のオーナーさんに教えてもらい、ポケットにしまったのですが気がついたときにはボロボロになっていた。
一本道から糠平湖に行くために横に逸れると、もう自分だけでは絶対帰れない。
これはキツツキ系の鳥が開けた穴かな?アッパーカットをもらうと脳は揺れるというが、クチバシでこんな穴を開ける奴らの脳は揺れないのだろうか。
上から真っ二つにすさまじく割れた樹に震撼!「凍裂」といって、樹の中の水分が凍って膨張することにより樹が割れてしまうのだそうです。凍裂の瞬間はすごい音がするそうですが、誰もいない森の中で凍裂が起きた場合、それは音がしたといえるのだろうか…と哲学的な疑問も浮かびますがまあ普通にしてるだろう…
マイナス25度くらいから起こりうる現象とのことで、こんなになったらさすがに樹が枯れちゃうかと思いきや、凍裂のみで樹が死ぬってことはないらしい。そもそも中の水分が凍った時点で死なないのもすごい。今後は「ゴキブリなみの生命力」を「白樺なみの生命力」と言いかえていきたいが、前者にひそかにこめられた嘲りのニュアンスがどっかいってしまいそうですね…
自然現象を教えてもらいながら林を抜けました。目の前に広がるのは凍った川らしい。いよいよ湖に近づいてきましたね。
白い一枚布みたいなエリアに飛び出したいのですが、わたしのようなボンクラが三月の氷の上を好き放題に進むと間違いなく死んでしまうので、先導のスノーシュー跡をなるべく踏むようにして進みます。
巨大な人造湖である糠平湖。一月には氷上カーレースもあるらしいです。わたしは氷上わかさぎ釣りに興味しんしんですが…
湖の向こうにタウシュベツ橋梁が見えます!
”幻の橋”タウシュベツ
天候は薄曇りで、湖の上を雪まじりの風が吹き渡る中をだんだん近づいていきます。
目の前に川があらわれました。
1月や2月なら氷が厚いため、めがね橋の真下まで行けるらしいのですが、今回はここまで。キーッ!わかってたけどやっぱり悔しい!
「橋に近づきたいよー!オロローン」
次は絶対に厳寒期か春に来てやるんだ…
タウシュベツ橋梁はコンクリート製のアーチ橋。士幌線の橋としてタウシュベツ川に架かっていましたが、糠平湖のダムができたときに湖に沈みました。士幌線は湖を避けて再敷設されましたが、現在は廃線となっています。ダム湖の水位がはげしく変わるため、季節によって完全に水没したり足元まで行けたりするというわけです。しかしそんな状況は石造りならまだしも、コンクリの橋にはあまりにも苛烈。「10年後はもう崩壊してるかも」と言われながらなんとか持ちこたえている状態です。
JRのフルムーンの広告に使われたりして知名度も上がりましたし、「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」の一つとして北海道遺産にも指定されています。しかし保存工事等は特に予定されてはいないみたい。「10年前も『10年後はもう無理だろう』と言われてたらしいですよ」とのことなので、意外と丈夫なのかもしれませんが…。真ん中のくぼみは2003年の十勝沖地震による崩落。ほんとにいろんな意味で幻の橋となりかねない様相なのです。
流木に腰かけて、オーナーさんが魔法瓶に入れてきてくれた熱いお茶をいただくメレ山。
メレ山「幻の橋にカンパイ!」
オーナー「ホー、写真ってそうやって撮るんですね。斬新な構図ですねー」
メレ山「ポッ…(こんなエビデンスっぽい写真を撮っているところを素直に感心されると異常に恥ずかしい…)」
雪と氷の分厚い層ができている。
座って橋を眺めているとさすがに寒くなってきたのでまた来た道を戻ります。
糠平湖名物の「きのこ氷」です。水位が下がるにつれて伐り株が氷を突き抜けることでできるらしい。雪の魔法…まさにマジックマッシュルームですね。
橋をもっと近くから見られなかったのは心残りですが、実にすがすがしい景色で歩いてるだけで楽しかった!多少晴れ間が出たこともあって、寒さはほとんど感じませんでした。よく話に聞いていましたが、北海道って屋内や車はいつもガンガンに暖めているのであまり寒さを感じる機会がないですね。
帰り道「そういえばこの旅行では、犬ぞりに乗ったり旭山動物園に行ったりはしたんですけどぜんぜん野生動物は見てないんですよ…」という話をしていたら、林道の奥からエゾシカがこっち見てた!上の写真にものすごく小さく写ってます。こういうことがあるから、14-150mmのレンズを早く買うべきだったね…。
これだけ自然が豊かなところなので、住んでいるとエゾテンなどいろんな珍しい生き物が見られるそうです。オーナーさんは「料理に出そうかと思ってプチトマトを植えてみたら、そろそろ食べ時かなという頃にシカにそっくり食べられました…」と言ってました。そう、奴らはそういう奴らなんですよ…*3
あっ、国道の崖の上にも
シカ1「ウププ、シッポをまいて帰るがよいわ」
シカ2「はようまた来んと橋崩れてしまうで〜」
シカ3「安月給で虫の標本など買っていては軍資金も貯まるまいぞ」
妙に懐事情に詳しいシカに煽られた!!!
バスの時間までに糠平を散策しつくすことにしました。鉄道資料館もあるのですが冬季閉館なので、ひがし大雪博物館にやって来たら…えらいファンシーな熊がお出迎え。
熊「好物はシカなの〜!」
シカ「ミギャー」
メレ子「この熊とは気があいそう!!」
「小さな殺し屋です」そういえばアンタの茶色い友達みたいなのもトキを殺しまくって問題になってたね…
ノスリとアオダイショウの死闘がエキサイティング。こんなの見つけたら2GBのメモリーカードをいっぱいにしてしまいかねない。
ちょっと湯ざめが心配ですが、さらに残った湯めぐりチケットを使うなどしました。
みつをがこんなにいっぱい…見ず知らずの人にそのままの自分を肯定してもらえる喜びが特盛りで涙が止まりませんね。
そのままの自分でいいかはともかくとして、生まれたままの姿でお風呂入るよー
どこもこぢんまりしていますが、すべて源泉掛け流しでなかなかいいお風呂でした。
つまづいたっていいじゃない
源泉だもの
めれを
その後もユースに戻っておやきをいただいたりして夕方まで過ごしました。荷物も快く預かってもらったりオススメのお風呂やごはん屋さんについても細かく教えてくれて、ほんとに親切な宿だった…ぜひまた泊まりたいです。
このあとは札幌に戻って「白い恋人」の工場に行ったり、憧れの夜行列車トワイライト・エクスプレスに乗って京都に帰ったりしたのでした(トワイライト・エクスプレスとあわせて一本の記事にしようかと思ったのですが、例によって十分すぎるくらい長くなってしまったので別立てにします…)。